Human or Android?

社会

人間と他の生物を見分けるのは見た目だ。今のところ人間そっくりの生物は他に存在しない。しかしテクノロジーが進化すれば、今後は人間と見分けがつかないアンドロイドの存在が当たり前になるかもしれない。しかも高度なAIによって人間らしさも再現されるようになるだろう。見た目も中身も人間っぽい機械。外見も内面も人間に限りなく近いものがあったとしたら、人間とアンドロイドのどっちに価値を感じどっちを選ぶのだろう。さて、あなたはどっち?


オレの恋人(人間)

 朝7時。いつものように目覚ましの音で目を覚ます。寝ぼけまなこで横を見ると既に恋人のマナは目を覚ましていて姿が見えない。フライパンで何かを焼く音がするので、どうやら台所で料理をしているようだ。
 俺は目を覚ました後、洗面所で洗顔と口をゆすいでリビングへ。まずは電気ポットに水を入れ湯を沸かしてコーヒーを飲む。この一杯が寝ぼけた頭を覚醒させてくれる。マナは俺の姿を確認するとテーブルの上にテキパキと料理をのせていく。今日のメニューは食パンに緑黄色野菜がたっぷりのサラダ、あと卵焼き。この前の健康診断で内臓脂肪の数値が高く出てしまったため、先週から朝食にサラダがつくようになった。
 最近の彼女の口癖は「糖質制限!!」と「マイクロ細胞ダイエット!」だ。やや、過剰な気もするが俺の身体を気づかってくれるのはありがたい。ただ、マナは料理が少し苦手らしく底面が黒く焦げていたり、塩を振りすぎてしょっぱい卵焼きを3回に1回はつくってくる。それを自分で食べて「しょっぱ!!」とビックリするまでが1セット。前なんて塩と砂糖を間違えて激甘の卵焼きを作ってしまい、二人で朝のデザートだと自分に言い聞かせながらたいらげたりもした。ちょっとしたミスはご愛敬。マナの料理の腕は少しずつ向上していて自身も次こそはと意気込んでいる。
 俺はそんなちょっと不器用でおっちょこちょいな彼女と、楽しい朝のひと時を過ごしてから出勤をする。

俺の恋人(アンドロイド)

 朝7時。いつものように目覚ましの音で目を覚ます。寝ぼけまなこで横を見ると既に恋人のマナは活動を始めている。フライパンで何かを焼く音がするので、どうやら台所で料理をしているようだ。
 俺は目を覚ました後、洗面所で洗顔と口をゆすいでリビングへ。既にマナが用意してくれていたコーヒーを飲む。このコーヒーは昨日輸入されたばかりのブラジル産の豆を使っていて芳醇な香りとほどよい苦さが俺のお気に入りだ。希少な豆なので手に入りにくいのだが、マナはネットにアクセスしその豆が輸入されることを知るやいなやすぐに注文してくれるのだ。この一杯が寝ぼけた頭を覚醒させてくれる。
 マナは俺の姿を確認するとテーブルの上にテキパキと料理をのせていく。今日のメニューは食パンに緑黄色野菜がたっぷりのサラダ、あと卵焼き。マナにはあらかじめ栄養士と調理師の知識をダウンロードしてあるので、栄養バランスは十分に考慮され味も抜群だ。今日の卵焼きのフワとろ感といったら、そこらの料亭にもひけを取らないかもしれない。マナ自身は食事をしないので、俺が食べる様子をみながら「おいしい?」とか「塩加減はどう?」とかきいてくる。この回答ももちろん彼女の中にデータとして蓄積され、次回は栄養バランスを整えつつも、より俺好みの料理が食卓に並ぶというわけだ。
 俺はそんな彼女のおいしい料理で朝から幸せな気持ちになってから出勤をする。


私のこども(人間

 ウチのミカは今年で8歳になる。ちょっと前までは男の子たちと一緒に外を駆け回ってたけど、いつの間にかオシャレに興味を持ち始め、女の子たちといることが多くなった。最近では学校が終わると、いったん家に帰ってからすぐに友だちの家に行くことが多い。私は自宅でイラストを描く仕事をしていて正直あまり構ってあげられないので、外で時間をつぶしてくれているのはありがたい。
 夕方5時ごろになるとミカは外から帰ってくる。玄関で靴をバタバタと脱ぎ捨て、すぐにリビングのソファにダイブする。私は「手洗いとうがいはしたの?」とミカに伝えてはいるんだけど、「ん~、したよ~」と分かりやすい嘘をついたりする。「ダメでしょ!風邪ひいて遊びに行けなくなるよ!」なんておどかすと、「もう、分かったよ~」としぶしぶ洗面所の方に向かう。自分で叱っておいてなんだけど、私も母に毎回手洗いとうがいをしなさいと注意されてたっけ。他にもミカと私は片づけや勉強が苦手なところとかが似ていて、つい昔の自分を思い出して笑ってしまう。今日も宿題があるみたいなので、あとで一緒に教科書とにらめっこだ。
 さて、仕事も一息ついたしこれからご飯の支度。「ミカ~、ちょっと手伝って~!」と呼びかけると「は~い」とあんまり乗り気でない表情をしながらも手伝ってくれる優しい子だ。今日のメニューが好きなハンバーグだとわかるとテンションが上がる。このあたりも私の子供のころにそっくり。「ハンバーグおいしいね!」出来上がったご飯を食べながら、娘とする会話は至福のひと時になっている。

私のこども(アンドロイド)

 ウチのミカは8歳に設定した。ちょっと前まで男の子たちと一緒に外を駆け回ってたけど、少し女の子らしくしてあげたいなと思って、この年代の女の子の好みや趣向をダウンロードしてある。すると少しずつ女の子たちといることが多くなった。知識はデータをダウンロードすればいいので、学校の授業を受けるか受けないかは自由だ。ただ、人間の子供と共同生活することで、機械にはない非合理な部分を学習できると思ったので、学校には通わせている。最近では学校が終わると、いったん家に帰ってからすぐに友だちの家に行くことが多い。人間の友だちは、最近ファッションに興味を持ち出したから、ミカにもファッションの知識をダウンロードした。
 夕方5時ごろになるとミカは外から帰ってくる。玄関で靴を揃え、雑菌を落とすため全身を洗浄してから家に入る。私は「お帰りなさい」と言うと、「ただいま、おかあさん」といってリビングのソファに腰掛ける。ミカは「ダメじゃん。部屋すごくちらかってるよ!」と言いながら、せっせとちらかっている部屋を片してくれる。片付けのプロ「コンマリ13世」のテクニックも頭に入っているので、あっという間に部屋はきれいになる。私の苦手なところはミカが補ってくれるし、家族としてだけでなく私をサポートしてくれる存在としても欠かせない。一応、今日も宿題はあるみたい。でもダウンロードすれば一瞬!
 さて、仕事も一息ついたしこれからご飯の支度だ。ミカはアンドロイドなのでごはんを食べないけど料理の手伝いはしてくれる。もちろん嫌な顔一つせずに。最近はもう少し私の娘らしさを出したいなと思って、子供の時に撮った動画のデータをミカに入れてみた。すると、なんとなくしゃべり方や、表情、しぐさが私っぽい。もしかしたら人間の娘よりも私に似た機械との生活を私は楽しんでいる。


僕のアイドル(人間)

 僕の趣味はアイドルの追っかけだ。休日は推しの『サクランボ女子』(通称サク女)のDVDをチェックし次のライブに備える。サク女での推しはトモカ。年齢は21歳。サク女に入って3年目の子だ。大人っぽいエキゾチックな顔と黒髪ロングヘア―が特徴的で、ライブでは誰よりも全力でダンスを踊る。
 トモカの存在を知ったのは1年前、仕事がたまたま早く終わって家でテレビを見た音楽番組だった。周囲のメンバーとは明らかに違う気迫あふれる彼女の姿に僕は1発でノックアウトされてしまった。それ以来、僕はトモカの追っかけをしているわけだ。トモカが在籍するサク女には握手会がある。参加条件はCDを10枚買うだけ。そしてついにこの前、握手会でトモカと直接会ってしまった。彼女は人気メンバーなので、握手するまで行列に並ばなければならない。待つこと1時間半・・・。
 係員に誘導されてパーテーションで仕切られたスペースに行くと、そこにはテレビで見るトモカがにこやかな笑顔で立っている。ダンスを踊っている時とは違い、握手をしながら俺の話にしっかりと耳を傾けてくれるトモカも魅力的だった。「アツシさん、今日はありがとう。また来てくださいね!」トモカは別れ際に僕の名前まで呼んでくれた。あまりにテンションが上がったので、帰りに最近発売されたサク女のDVDを買って帰る。画面にはつい数時間前、僕に話しかけてくれたトモカの姿が映っている。全力で踊る彼女の姿は美しい。僕がトモカの追っかけをやめることはしばらくなさそうだ。

僕のアイドル(アンドロイド)

 僕の趣味はアンドロイドアイドルの追っかけだ。休日は推しの『サクランボ女子』(通称サク女)のDVDをチェックし次のライブに備える。サク女での推しはトモカ。年齢は21歳。サク女に入って3年目の子だ。大人っぽいエキゾチックな顔と黒髪ロングヘア―が特徴的で、ライブでは他のメンバーが完成度の高いダンスを披露する中、ダンスにあえてレイテンシー(遅延)を出すことで、人間っぽい所作を作るのが僕は好きだ。
 トモカの存在を知ったのは1年前、仕事がたまたま早く終わって家でテレビを見た音楽番組だった。周囲のメンバーとは明らかに違う気迫あふれる彼女の姿に僕は1発でノックアウトされてしまった。それ以来、僕はトモカの追っかけをしているわけだ。最近ではCD特典として推しのアイドルをつくれるようになった。CDを1枚買うと1パーツ、10枚買うと10パーツ、100枚買うと全パーツが届き、なんと自分が推しているアイドルのアンドロイドをつくることができる。まさに「いつでも会えるアイドル」というわけだ。
 ちなみに、今僕の横には途中まで組みあげたトモカの下半身が座っている。完成したトモカは自分好みにカスタマイズできる。例えばドS系の女王様キャラや、朝起きたら昨日輸入されたブラジル産の豆からコーヒーを入れてくれるような尽くす系にもできる。ファンにとっては理想的とも言えるだろう。画面には全力で踊るトモカの姿が映っている。その横でトモカを見ながら「すごい!」とはしゃぐ下半身のトモカがいる。どこにいても自分の推しがいる世界は素晴らしい。もう少し頑張れば、はしゃいでいるトモカの全身が見られそうだ。


我らのアスリート(人間)

 今年のチャンピオンズリーグ決勝には良くも悪くも驚いた。まさか、決勝の大舞台でゴールキーパーがあんなミスをするなんて・・・。確かにシュートは強烈だったが、ボールは体の正面に飛んでいた。仮にキャッチすることが無理でも、ゴールの外にはじき出すことはできたはずだ。しかし、無情にもボールは彼の手をすり抜けてゴールへと吸い込まれた。その瞬間スタンドからはサポーターのこの世の終わりかのような悲鳴が。そして、ガックリと肩を落としうなだれるゴールキーパーの姿がスタジアムのモニターに映し出される。これまで彼が見せてきたパフォーマンスからするとありえない出来事だった。
 普段できているプレーができなくなってしまう。やはりチャンピオンズリーグ決勝ともなるとプレッシャーは相当なものなのだろう。サッカーはミスが当たり前のスポーツというが、まさにこの試合はそうしたミスが勝敗を分けた一戦だった。それにしてもやはりサッカーは面白い。人間技とは思えない高度なスキルによって試合が決まるかと思えば、アマチュアの選手が犯すようなミスによって試合が決まることもある。予想のつかないスポーツ。それがサッカー。
 さて、今夜はどんな試合が観られるだろうか?録画しておいた試合を楽しみに家路を急ぐ。

我らのアスリート(アンドロイド)

 サッカー界で近年大きな変化が起こった。アンドロイドの登場だ。アンドロイドは人間の能力をはるかに凌駕。世界のトップ選手たちでも全く敵わないので、人間は人間同士、アンドロイドはアンドロイド同士で試合をしている。当初は「アンドロイドの試合なんて見るもんか!」と否定的な声もあったが、やがてその声も小さくなった。なんといっても、アンドロイドたちが人間をはるかに上回るハイレベルで刺激的なプレーを見せてくれるからだ。
 彼らのプレーは人口知能によって完全に制御され、試合中も常に修正が繰り返されている。その集大成が今年のアンドロイドチャンピオンズリーグ決勝だろう。彼らはミスをしない。全ての動作が正確で、一連の所作を見ているだけでも魅了される。オフェンスはディフェンダーのポジショニングとゴールまでの距離を衛星を使ってミリ単位で瞬時に計算。風速やグラウンドの芝の長さの違いから、ギリギリ味方だけが追いつけそうな位置に最適なスピードでパスを出す。一方、ディフェンスはオフェンスがボールをける瞬間の首や足、体をひねる角度からパスの種類を判定。相手の走り出す位置と、目線の角度からパスの出される位置を計算し動き出す。ところが、オフェンスはそれさえ計算し、ディフェンスはその計算をさらにその上を行こうとするのだ。
 アンドロイドの登場によってサッカーはさらに面白くなった。まるでアトラクションを見ているかのような刺激的で予想のつかないスポーツ。それがサッカー。
 さて、今夜はどんな試合が観られるだろうか?録画しておいた試合を楽しみに家路を急ぐ。

END